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それから意識が戻るまで暫くかかり、その間に内定を貰っていた就職はダメになった。
退院してからも、通院とリハビリの毎日。
〔ameno〕の元マスターの日向さんは、入院中も度々見舞いに訪れ、随分と良くしてくれた。
体調に合わせて、短い時間から使ってくれて、ゆっくり社会復帰させてくれた。
日向さんが実家の農業を継ぐという事情で、店を離れる事になった時、僕が店を続けるなら譲るけど、そうでないなら閉めると言った。
有り難かった。
僕なんかの事を、高くかってくれていた事に心から感謝した。
この店が好きだ。
それから、僕は〔ameno〕を恋人にして生きて来た。
…… ナナさんに出逢うまでは。
樹の出現で、詳らかにしていなかった事が、相手を不安にして、気持ちのすれ違いが起こってしまうという事を目の当たりにした。
近い将来、ナナさんにも、この傷の話を伝えておこうと思った。
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