覚悟

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僕は少し迷ったが、話しておこうと思った。 こんな時だからこそ、話しておくべきだと思った。 「ナナさん、今日は映画は止めて、お互いの事ゆっくり話さない? 僕も話したい事があるんだ」 「ん。 良いね」 「僕の話、あんまり気持ちのいい話じゃ無いんだ…… 少し長くなるけど、聴いてくれる? 」 「もちろん」 「この腹のキズの話」 服をめくって、チラッと見せた。 「了解」 「僕さ、自分で言うのもなんだけど、そこそこモテたんだ。大学の頃、学生結婚みたいな事してた。正式に入籍する前に別れる事になったけど…… 」 それから、如何に恋愛に対していい加減だったか、それが彼女を不安にさせ、腹を刺される事になった事。余計な感情を挟まない様に注意しながら、事実を淡々と語った。 「生きる事にも無頓着だったみたい。意識が遠のく時、全然怖いとか無くて、逆に、あの子の側に行けるかなぁーって少し嬉しいって云うか、小さいのに1人で逝かせちゃったから、心配だったって云うか、なんか不思議な気持ちだった」 話終えて、顔を上げると、ナナさんは、両目からポロポロと涙を零し、嗚咽を堪え、静かに静かに泣いていた。
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