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「俺、改めて、2人で生きていくって言う覚悟が出来た」
「うん。おじいちゃんになっても2人で居ようね」
「そうだな。 今度、ご両親に挨拶に行こうか?」
「えー。いいよ。ウチって基本的に放任主義だもん。母さんは、薄々気付いてるだろうけど、父さんは、真面目を絵に描いたような人だから… 結構難しいかも。妹はもう話してて、この状況知ってる」
「へぇ。妹が居るんだ。美人だろうな」
「どうだろ。 僕と似てるって言われる。自由奔放で、ワガママは、女の特権って思ってる」
「でも、可愛くて無下には出来ないんだろ?」
「まぁね」
「そういえば、夏にコッチに遊びに来るって言ってたよ。東京の農業大学で乳酸菌の研究してるんだけど、コッチに、有名な教授が居るらしいよ。全然知らないけど」
「面白そうだな。俺も専門分野に特化したところに行けば良かった。純粋に楽しんで学べそうだ。俺は法学部だったからな」
「ナナさんらしいよ。僕は情報科学を専攻してた。本当は、SEになる予定だったんだ」
「もしかして、店のホームページ自分で作ってるのか?」
「モチロン」
「技術も有って、センスも良いんだな」
「そう言って貰えると嬉しい! 実は、料理やカクテル作りも僕にとっては科学の実験みたいなものなんだ。切り方で、食感が変わったり、斬れ味の良さで、断面が変わって、それも味や食感に影響する。だから、器材や、直接口に触れるグラスなんかは、ついつい拘っちゃうんだよね。本当に面白いよ」
「知らなかった。包丁って大事なんだなぁ。店でも、果物切った後とか、頻繁に砥いでるもんな」
「そ。だから斬れ味抜群だった」
自分の腹を指差して笑った。
「その冗談は笑えない」
俺は、渋顔で睨みつけた。
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