散った恋

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ぼんやりと、車窓から夜の街を眺める。 暫くすると終点の駅に着いた。 プチ逃避行もこれで終わり。 仕方なく降りようとした時、隣の席に落ちている名刺入れが目に留まる。 拾ってみると、案の定、それはさっきまで隣に座っていた男のものだった。 中を確認すると、契約が取れたと喜んでいたクライアントであろう名刺も入っている。 酒に酔っていたとはいえ、こんな大切な物を落としていくとは…… これが無いときっと困るだろう。 駅員に預けても良いのだが、どうせ明日の帰りの電車で彼の最寄り駅を通る。 そこまで届けてやってもいいか……と、ひとまず携帯に連絡を入れてみる事にした。 俺は基本的に面倒な事は避けて通りたい方だ。 普段とはまるで違う自分の思考に思い当たり苦笑する。 あのキラキラしたオーラに当てられたせいなのだろうか…… ……思えばこの時、既に彼に惹かれるものがあったのかもしれない。
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