運命

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運命

工事が竣工し、引き渡しを受けたばかりの真っさらな事務所に、机や椅子が運び込まれる。 午後からの面接に向けて、応接セットの準備をする。 面接には、樹も着いて来るらしい。 美味いコーヒーで唸らせてやる。 店が準備中だからって、中途半端なものは出したく無い。 僕の9歳年上で、落ち着いてて、逞しくて、存在感が有って、仕事も成功してる。 服装や身に付ける物もセンスが良い。 そんなアイツに勝てるのは、身長と、腕しかない。 ?? 何気に褒めてないか? いやいや、ダメだ。 ナナさんにとって、過去の恋だとしても、どうしてもアイツの事は気になってしまうし、絶対に負けたくない。 いつでも奪ってやる、みたいな気概を樹から感じるからだろうか。 店の方に行き、僕の厳選したコーヒー豆を使って、ネルドリップで丁寧にコーヒーを点てて気持ちを落ち着ける。 ナナさんは、事務所にコーヒーメーカーを置こうかと言ったが、僕は反対した。 ナナさんが飲むコーヒーは、僕が入れたい。 お客様にも、僕のコーヒーを出す。 僕の熱意が思いの外熱かったのか、少し驚いたあと、「助かるよ。」って了承してくれた。 ひとまず、今は、このコーヒーで寛いで貰おう。
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