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葛藤
衝撃の後、アキに支えられながら、自宅へ戻った。
体の震えが治らない。
「ナナさん。 大丈夫? こんな偶然って。 神様は、意地悪だ。 悪戯が過ぎるよ… 」
「アキ。 すまない。 俺を抱き締めてくれ。」
ソファの隣に座ったアキが、俺を引き寄せ、抱き締める。
アキの肩に頭を乗せ、気持ちを落ち着ける。
情けない。
こんな風になってしまうなんて。
あの雨の日が、何度もフラッシュバックして、頭から離れない。
妹は、スイミングスクールに通っていた。
その日の天気予報は外れ、夕方から雨が降り出していた。
母は、車でスイミングスクールまで迎えに行った。
その足で、傘を持たない父の事も駅まで迎えに行ったのだ。
俺はリビングで課題をやっていて、母が「行ってきます」と妹を迎えに出る時も、「ああ。」とか「うん。」とかしか言わなかった。
いつもより帰りが遅かったが、また買い物にでも行っているんだろうと、たいして気にも留めなかった。
そんな時、鳴り響いた固定電話。
家族なら携帯に掛けてくるので、一体誰からだろうと思いながら電話に出た。
その電話は、警察からの事故の報せだった…
史花さんが悪い訳じゃない。
彼女だって、被害者みたいなものだ。
頭では、解っているのに、気持ちが追い付いていかない…
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