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揺れる
本来ならば、契約書を作成するのは、貸主側になるのが一般的ではあるが、今回はそういった作業に慣れている俺が作成する事にした。
契約書の素案が出来て、見てもらおうと思い階段を下りる。
閉店時間までまだ少しあるが、早めに見て貰いたい。
店に下りると、客はおらず、灯りも落ちている。
夕方から雨が降りだしたせいだろうか。
アキは、この店の厨房と食品庫が広いのが気に入ってると言っていた。
食品庫の奥には事務所とロッカールームがあり、トイレやシャワーも付いている。
ロッカー室には簡易ベットがあり、アルバイトが客に飲まされて酔いつぶれた時や、同居前、新作メニューの開発で徹夜になった時には、アキ自身も使っていたらしい。
事務所の方で物音がする。
今夜は早仕舞いにして、事務仕事でもしているのだろうか。
覗いて見ると、事務所の中は空っぽで、ロッカールームの扉が微かに開いていた。
「アキ?」
扉の隙間から見えたものは、髪の長い女と抱き合うアキの背中だった。
微かにシャワーの水が流れる音が響いていた。
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