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雨の〔ameno〕
夕方から雨が降り出した。
こんな日は、客足が遠のき、店は暇になる。
新しいピクルスの仕込みでもしておこうか。
バタンと扉が大きく開いた。
前の彼女の友達の沙耶が泣きながら、真っ青な顔で飛び込んで来た。
歓楽街のクラブで働いている彼女は、同伴の男性に強引にホテルに連れ込まれそうになり、突き飛ばして雨の中逃げて来たらしい。
びしょ濡れの沙耶にタオルを渡し、落ち着かせるためにホットレモネードを作った。
少し落ち着いた沙耶は仕切りに腕をさすっている。
寒いのも有るが、男に触れられたところが気持ち悪いのだろう。
このまま、出勤させるのは可哀想だ。
ロッカールームでシャワーを浴びる様に促し、連れて行く。
シャワーのコックを捻り、適温になるのを待つ間、タオルとバスローブを出してやる。
店にドレスは有る様だから、タクシーで向かわせれば何とかなるだろう。
ヒールの高いパンプスを脱ぐ時に、足元がふらつき、思わず肩を支えた。
その時、背後でカサリと乾いた音がして振り返る。
ナナさんだ。
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