散った恋

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散った恋

あの頃、俺は疲れていた。 とにかく、疲れ果てていた。 おかしな時期に異動になり、配属された経理課。 驚く程に整理されていない書類の山。 把握仕切れない契約までの流れ。 明らかに高額な単価の見積書や請求書。 前任者は……横領していた… 道理で、細かく見ていけば辻褄が合わない筈だ。 日々の残業。 最終電車で帰る日々。 そんな週末の夜、何となく、本当に何となく、しかし衝動的に反対方向の電車に飛び乗っていた。 そして、たまたま隣に乗って来た酔っ払い。 それが、高杉 樹(たかすぎ いつき)。 俺のジェンダー感を緩やかに、そして確実に、掻き乱した男だ。
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