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アキの傷
夕方、1人の男がカウンターに座った。
「生ビール」
存在感のある男だ。
生ビールとつまみのナッツを出す。
「マスター。この辺に、〔七尾 春日〕って人、住んでない? 若しくは、客で来ないかな?」
「どうしてですか?」
「この春に突然居なくなっちゃって、探してるんだ」
「そうなんですね」
直感的にコイツだ、と思った。
この男が、ナナさんを傷つけたヤツだ。
「で? マスターは知ってる? 」
「はい。でも本人の了解無しに、プライベートを勝手にお伝えする事は出来ません」
「あぁ。今流行りの個人情報保護ってヤツ」
「それもありますが…… それ聞いてどうするんです? 」
「そりゃ、行くよ。行って、ちゃんと話して、俺んとこ戻って来てもらう」
聞いてたとおり、強引だな。
他の客に聞き込みされても面倒だし…… それに、分かるまで毎日この辺ウロウロするだろう。
それに、なんか癪に触る。
ナナさんは、俺のだ!
「はぁ…… 。 正直気が進まないケド…… 」
「 … ! 教えてくれるのか? 」
「 ここに帰って来ますよ… 僕と一緒に住んでる」
「 …… 。へぇ…… 」
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