30. TI AMO

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 目の焦点が合わなくなるほど顔を近付けられ、ダンテは戸惑った。 「コルラード」  そういえば最近、唐突にこういった行動が多いなと思った。  コルラードはゆっくりと顔を近付けると、口付けた。  唇を強く押し付け、顔を斜めにして更に押し付ける。  やけに速い心音が聞こえた。  コルラードの心音だろうか。  性交のときに胸元に口付けても、こんなに速くなっていたことはない。  どうしたんだと思った。  ほんのり高めの体温が夜着を通して伝わり、抱き締めたい衝動に駆られた。  抱き締めても良いのだろうか。  ダンテは、コルラードの脇の辺りに手を伸ばしては途中で止め、また手を伸ばしては止めた。  それを何度も繰り返した。  コルラードに想いが通じたと思い込んでは舞い上がり、勘違いだったと知って沈んだことが何度かあった。  これは、想いが通じた接吻と思って良いのだろうか。  コルラードは、小柄な体を密着させた。  ダンテの顔を両手でがっちりと掴み押さえ込んで、唇の上で小さく息を吐いた。  コルラード、と呼び掛けるのも許さず、再び柔らかな唇を強く押し付ける。  手慣れてはいないが、懸命な接吻という感じだった。  唇を強引に離し、ダンテは大きく息を吐いた。 「待て……」  コルラードの華奢な肩を掴み、取りあえず退かせようとした。  どういうつもりなのか話を聞きたいと思った。  このままでは、合意も得ずに身体の下に組み敷いてしまいそうだ。 「待て……コルラード」  コルラードは離した唇を唇で追いかけた。  ダンテの言葉を遮って再び接吻した。  コルラードの、ミルクに似た肌の香りを微かに感じる。  自分の方に引き寄せるように、コルラードはダンテの黒い髪を掴んだ。  ダンテは、衝動的にコルラードの脇に手を這わせた。  一瞬だけ理性を取り戻し手を止めたが、コルラードが特に拒否していないと認識すると、両手でコルラードを抱き締め、髪と背中を激しく掻き抱いた。  身体の上で、唇を求め荒い息を吐くコルラードと、衣擦れの音をさせ只管(ひたすら)に絡み合った。 「コルラード」  唇を離された隙に、ダンテは声を発した。 「私から離れないでく……」  コルラードはまたもダンテの言葉を遮り、唇を(むさぼ)った。  嬉しいが本音をはっきりと聞きたい。  これは、好意と受け取って良いのか。  今度こそ、想いが通じた接吻だと思って良いのか。
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