1. CAPELLI D' ARGENTO

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   2  葡萄畑の広がる地域に建てられた別邸の周囲には、高い糸杉が疎らに生えていた。  所有の農地にも近いこの辺りは、洗練された雰囲気はないが、非常にのどかだ。  新しく植えられた庭木と、整えられたばかりの芝生とで、まだ不自然な眺めの庭をダンテは見回した。  海の方にいた親戚も、既にみな内陸に移っている。  連絡を取り合うのだけは楽になるな、などと考えた。  水を通すようになったばかりの噴水を眺め、ふと周辺を散策してみようかと思い立った。  潮の匂いの代わりに、草木の香りがする土地というのは、散策したらどんな雰囲気なのか。  あまり歩いたことは無かったので、見てみるのも悪くはないと思った。  馬屋に行き、一番乗りやすそうな馬を馬丁に選んで貰った。  海で育ったので船には慣れているが、馬の扱いは苦手だ。  内陸に住むなら、これも覚えなくてはならんかと思った。  練習がてら乗っていれば、土地勘が付くのも早いかもしれない。  悪くはないかと思った。  馬丁が設えた(くら)に乗り、一応知識として教わった通りの動作をしてみる。  馬の背中の筋肉の動きが、鞍を通じて奇妙な感触として伝わった。  飛ばすのはまだ無理だと思った。コツが分からない。  ゆっくりと歩かせる。 「行ってらっしゃいませ」  中年の馬丁が言った。  まだ試し乗りのつもりだったのだが、引っ込みが付かなくなった。 「あ……ああ」  仕方なく、のどかな(ひづめ)の音を立て門外に出てみた。  草の香りが漂う。  中々悪い香りではないと思った。  今まで住んでいた海の街は、どの方角だろうか。  馬上から、見当を付けた方向を眺めてみる。  風が温く滞った感じだ。  いろいろ違うものだなと思った。  暫く行くと、遠くに城壁が見えた。  街はさほど遠くはないのだなと思った。  のどかに、ポクポクと音を立てて城壁を目指した。
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