姉妹

1/1
2人が本棚に入れています
本棚に追加
/1ページ

姉妹

若葉茂る桜の傍を通ると、誰か寝ていた。 私はそれをてっきり子供か何かと勘違いしてたが、それはお姉ちゃんだった 「おねーちゃん」 私が耳元でそう囁くと、お姉ちゃんはゆっくり目を開けて、背伸びをした。 背中には木の枝やら何やらが付いてる とりあえずそれを私は落としてあげた 「ありがとう」 真顔で言ったお姉ちゃんに 「どういたしましてっ」 と、にっこりと返す 若葉茂る桜はざあっと風に揺れた。 まるで私達二人を撫でるみたい 「私とした事が……こんな所で寝落ちとは」 「だーいじょーぶ!珍しくないから!」 「でも………」 頬を染める、お姉ちゃんにとりあえず袋からドーナツを一つ渡す 「どうしたのこれ」 「あのね、そこの’’カンヅメ’ってパン屋さんあるでしょ!そこで買ったんだ!丁度100円セールだったから!」 ふうんと興味津々な顔でドーナツを一口、お姉ちゃんは齧った。どうでもいいが、綺麗な歯だ。健康的で、すごく女性らしい 「正直言っていいかしら」 「なーに」 「相変わらず、普通の味ね。カンヅメのドーナツ………」 「あはっ」 カンヅメのドーナツは昔から無難だった。すごく美味しくも無く、まずくも無い。 クリームがいっぱいでも、全くのプレーンでも無い。軽くお砂糖がかかったぐらいのドーナツ 「あはははっ」 「何笑ってるのよ」 「だってお姉ちゃん、食べてるの三つ目のドーナツなんだもん!」 「ぐっ……」 はむっとドーナツを齧って、また照れた。ドーナツ気付けば私ももう四つ目だ。不思議なドーナツ。何でか食べてしまう 「それにしても若葉も良いものね。何で誰も気付かないのかしらこの良さに」 「気付いてる人は居ても、わざわざ言わないと思うよ。私達が仲良しって事と同じくね」 まぁっ……と、表情で、私は額をぱちんと弾かれた。ちょっぴり痛いけど、久しぶりのデコピンは嬉しかった この周りの空気だけ、深く沈み込んだ様だった。静かで優しくて、冷たくて 「ほんと……ばかみたいね」 「え……?」 「だってあなたも若葉を見て、気付いたんでしょ。私に」 図星だ。笑うしか無かった 「帰ろっか。海幸」 「うん!お姉ちゃん!」 こうしてまた、空間は変わり続ける。そこに 正しいも過ちも無いのだ。ただ、綺麗な限り 「ねえ」 「んー?」 「ドーナツいくつ残ってる?」 「んとね、みっつ」 「それじゃ、一つずつ食べましょう。一個はお母さんに残しといてね」 「えーそんなー」 「そんなあじゃないの。全く……半分あげるから」 「え?やった!ありがとう!そだ!お礼にドーナツ半分あげるね!」 「………意味ないじゃない」 私達二人は仲良しだ。それ以上もそれ以下でも無い。今はこの状態が一番いい。まるでそれは桜が新緑になった様な、そんな感じ。 「口が汚れてるから拭きなさい」 「うん!」 口を拭いてくれたお姉ちゃんは少しお母さんみたいだった。そんなお姉ちゃんを見て、私はちょっぴり大人になりたいな。と思ったりね
/1ページ

最初のコメントを投稿しよう!