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世間では夏休みが終わる8月31日の夜、東野水輝は晴日市繁華街駅前の居酒屋で酒に溺れていた。父は殺され、母はその殺人犯として逮捕、自分が講師をしていた塾も裏口入学の斡旋をしていた事が発覚し、もう叩かれに叩かれきっていた。その対処に疲れきっており、もう酒に逃げることしか出来なかった。
「お客さん、飲み過ぎですよ」
「うるさいわね! 良いからもっと酒出しなさいよ!」
「すいません、お引取り願えますか?」
東野水輝は店から追い出されるかの様に退店した。千鳥足でフラフラと駅前を歩く、途中柄の悪いヤンキーにぶつかるも逆に怒鳴り散らすことで残念な美人扱いされて相手にされることはなかった。
「あたしが何したって言うのよ!」
そうくだを巻いていたところでゲロを吐きながら駅前の高架下で倒れ込んだ。もう精鋭塾で凛とした顔で塾生たちを指導していた頃の姿はもう無かった。
女装した集団がそれを見て訝しげな顔をした。
「やーね、何かしら」
「あんなに綺麗なのに全部台無しじゃない」
「気持ち悪いわね」
「なにがあればあんなんになるのかしら」
罵倒が飛ぶ中、その中の一人が東野水輝に向かって駆け寄った。
「ちょっとテルコちゃんどうしたの? そんなのほっときなさいよ」
その駆け寄ったのは小濱照史であった。
「水輝ちゃん……」
小濱照史は東野水輝をそっと優しく抱き寄せた。
おわり
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