ガニメデスの庭園

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「おい、いくらさっきこんな話したからって開くわけが……」と、岡田俊行がそう呟いたと同時に「カチン」と乾いた音が写真現像暗室に響いた。 「嘘だろ……」 「あれだけ東南アジア系の置物があるのに一個だけガニメデスの像があるのは違和感あったんだよね」そう言いながら参道求は金庫の中を見る。金庫の中にはアルバムと手帳程度の写真帳が合わせて数十冊にDVDディスクが束になって数十個。二段の棚になって中身はぎっしりと詰まっていた。参道求は比較的読みやすそうな写真帳をペラペラと捲る。中にある写真を見て参道求の顔がいきなり青ざめた。 「家族写真か?」 「パンドラの箱を開けてしまったようだ、凶器より恐ろしいものを見つけたよ」 参道求は青ざめた顔をしながらこう呟いた。そしてゆっくりと岡田俊行に対してその写真帳を差し出した。 「何だよ……」 岡田俊行も写真帳をペラペラと捲る。そこに写っていたのは信じられないものであった。それも最近見たような光景であった。東南アジア系の男児が裸で写っていた。ここまでならインターネット上のフリー素材でもよくある画像である。だが背景がホテルの一室で、その横には塾長が下着一枚で写っていればそれは全く違ったものになる。 「これ…… どういうことだよ」 アルバムをペラペラと捲るがとてもでは無いが正視に耐えない写真ばかりが出てくる。 「塾長のやつ、東南アジアで買春してやがった……」 「ってことは積み上げられてるDVDも……」 「カッコイイですね? さすが警察官の鑑! 僕全部映像見てるんですけど、あの金融屋が作ったもの以外にも結構混じってましたよ、海外産とかもあったんですけどね、もう余計にひどくて見てられなかったんですよ」 岡田俊行は署を出る前に稲葉白兎から言われた事を思い出していた。「海外産」がこれの事かどうか分からないが見せてみる価値はありそうだと言う思いも同時に渦巻いていた。 「これ、奥さんとか知ってたんだろうか……」 「知らねぇよ」と、参道求は吐き捨てた。 「これ、奥さんに言うべきなんだろうか」 「それはもう警察官としての判断に任せるよ」と、言いながら写真現像暗室から出て行った。その目には一筋の涙が見えた。
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