ガニメデスの庭園

16/45
前へ
/130ページ
次へ
 岡田俊行は晴日市警察署に戻っていた。結局参道求とはあのまま別れたきりになった。 戻るなりに自分の机に座っていた稲葉白兎をなるべく目立たない部屋に連れ出した。 「先輩、いきなりどうしたんですか?」 「おい、この写真の子供に見覚えはあるか?」 岡田俊行は金庫の中にあった写真帳から一冊を持ってきていた。 「東南アジア系の少年ですねぇ…… 目が死んでます…… これ東南アジアで売春やってる少年の写真じゃないですか? 出どころは? って決まってますね」 目を一目見ただけでどんな状態の少年か分かるところ稲葉白兎も「見慣れた」のだろう。 「分かってるなら話が早い」 「塾長が東南アジアで子供を買ってた事が分かって困惑してるってとこですね」 悔しいがその通りである。その気持ちをどう言えばいいのか岡田俊行には分からなかった。 「塾長が少年愛者なのはわかりました。それが事件に何か関係あるんですか?」 「知らねぇよ、それを今から調べるんだよ」 「東南アジアの方はこうでもしないと食べていけない家庭がありますからね。政府としては厳しくしてるとは言ってますけどアテにならないもんですよ、当時は実質合法みたいなもんです。それは途上国の事情なので我々に出来ることは何もないです」 「そんな少年を金出して買う方もゲスだし、子供を売る親もゲスだな」 「昔は日本から少年少女を買うツアーってのもやってましたからね…… それでも北欧や欧米から来る人の方が多かったらしいですけど、人権団体も買う日本人にはガタガタ言うくせに欧米人や売る業者や親には何も言わないんですよね」 「今はそれより聞きたいことがある。お前が見たビデオの中にこの少年はいたのか?」 稲葉白兎は上を向いて少し考え込んだ。そしてゆっくりと口を開いた。 「東南アジア系なんてどれも似たような感じですからね、正直判断はつきかねます」 それを聞いて岡田俊行は落胆した。 「でも、このベッドの模様は何度か見たことありますね…… 確か「衝撃のアジア少年売春シリーズ」で何回か出てるホテルですね…… ホテルって言うよりは売春宿かもしれませんけど」 「塾長が自分で撮影したものを無修正ポルノDVD店に卸してた可能性は?」 「断言はしませんけど、かなり高いと思いますよ」 それを聞いて岡田俊行は近くにあった壁を拳で殴った。ゴンと言った鈍い音が部屋に響いた。 「この写真、ご丁寧に日付と時間入ってますけど」 写真の日付は95年4月15日20時55分と入っていた。 「かなり古いですよねこれ、今だったらこんな写真フィルムまで税関でチェックされて一発アウトですよ」 「つまり何がいいたい?」 「今は違法で売春宿も無くなってます。つまり東南アジアに行く目的が買春なら行く目的が無くなったって事になるんですよ」アルバムをペラペラと捲りながら稲葉白兎は言う。その手が止まった。
/130ページ

最初のコメントを投稿しよう!

42人が本棚に入れています
本棚に追加