ガニメデスの庭園

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「行かなくて済むようになった可能性もありますね」と、言いながら一枚の写真を指さした。日本人の少年の姿が写っていた。服はまだ着ているところ「コト」に入る直前の写真なのだろう。撮影年月日は97年6月と記載されていた。。 「まさか自分の塾の塾生にまで手を出していたのか?」 「あそこは高校受験の塾ですよね? 二次性徴期の少年なんてよりどりみどり選びたい放題じゃないですか」 岡田俊行は稲葉白兎が指さした写真を注視した。すると、背景が見慣れた場所であることに気がついた。少年の背景にあるもの、それは自分が先程までいた殺人現場の個人指導室であった。少年の背後には机が4つ並べられて大きな長方形となっていた。 「ああ、これベッドにすると大きさ丁度良いんですよね。学校終わりとかにヤンキーがよくやってましたよ。うち、偏差値低いヤンキー高校なもんで日常茶飯事でしたよ」 岡田俊行は再び壁を殴った。その殴った拳には先程とは違い本気で殴ったせいか血が滲み出ていた。 「どうしたらいいんだよ……」 絞り出すぐらい小さな声で岡田俊行は呟いた。 「これで一つの可能性が生まれましたね、好き勝手されてた元塾生が復讐するために塾長を殺しに来たと考えられますね」 稲葉白兎はまるで他人事のような感じの冷たい口調で言い放った。 「40年も塾を経営しておりますもので…… その40年の中で変わらないものは厳しく接することです、問題が解けなければ罵倒や暴力なんて事もありました、この罵倒で辞める子は決して少なくはありませんでした」 岡田俊行は東野尚子の言っていた事を思い出した。辞めた理由に一つの仮説が生まれた。 「おい! 塾に行くぞ!」 「あの? 報告は? これ結構重要なことだと思うんですけど」 「そんなの後でいい! 気になることがあるんだ!」
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