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翌日になり小濱照史の居場所が明らかになった。調べるのは簡単だった、単純に名前を検索してみたらSNSに本名で登録している上にご丁寧に顔写真まで公開していたからである。
「便利な時代になったもんだな」
そう言いながら小濱照史のSNSを適当に見回してみる。顔写真もあの写真と比較する限りでは本人である事が確認出来た。ただ、書かれている内容は想像の出来ない世界であった。
【今日はネイルアートでこんなん入れちゃいましたー☆】
【今日はカッコイイお兄さんとお酒呑んじゃいましたー☆】
【ダーリンにドレス買ってもらっちゃいましたー☆】
「これ、男の書き込みだよな?」
「まさか塾長のせいで目覚めたって事は…… こんな人が塾長恨むなんて考えにくいですよ」
「でも、あくまで可能性だからな……」
スクロールを進めると「ニューハーフキャバクラ、まっしゅぽてと」と書いてあるのが見えた。
「あ、この店……」
「知ってるのか?」
「ちょっと前に4課(マル暴)がガサ入れしたばっかなんですよここ」
「ん? 何で4課が? ガサ入れは生活安全部の仕事だろ?」
「この店、オーナーが極道なんですよ」
「飲み屋のオーナーが極道ってよくある話だろ? ケツ持ちもついでに担当してる感じだろ?」
「それがですねぇ…… 大中京繁栄組の若頭(カシラ)の八田大輔(はった だいすけ)がオーナーやってるんですよ」
「誰それ? 有名な親分さん?」
「ああ、先輩実話系の雑誌とか読まなそうですもんね」
実話系の雑誌を読んでる方が珍しい。そこは気にしない事にした。
「大中京繁栄組は中京首都圏を中心にした日本最大の暴力団です、そこの今の3代目でトップの実の息子が八田大輔なんですよ」
「今のトップの実の息子って事は…… 将来のトップじゃないか! そんな奴がどうしてキャバクラのオーナーなんてやってるんだ?」
「一応、表じゃあ風俗産業のプリンスなんて呼ばれてますからね、シノギの一つでしょう」
風俗産業が表かどうか疑問に思ったがとりあえず話を続けて聞く事にした。
「あそこに所属してる嬢の中に密入国のアジアンがいるみたいなんで4課もそれ理由にして八田大輔を逮捕にしたいみたいなんですけどね」
「こんな大物逮捕したら組の若い衆が暴徒化して大騒ぎになるんじゃないか? 多分この晴日市で戦争が勃発するぞ」
「それもあるけど何よりあいつ尻尾出さないんですよね。現に今回のガサ入れも不発に終わりました」
「そう簡単にうまく行くわけないわな」
「余談ですがうちらと同い年で34歳です。若すぎて古参衆からは嫌われてますが今の3代目の実子であることと喧嘩が無茶苦茶強いこととシノギでの上納金(アガリ)が凄いので古参衆も表立っては文句言えないみたいです」
「若くて実力があるから昔からいる古参のヤクザからは嫌われてると…… 一般企業と変わらねぇな」
「年功序列でいるだけの人が偉くなってくシステムよりマトモだと思いますけどね」
それを聞いて岡田俊行は納得する事しか出来なかった。しかし年功序列によって守られる秩序もあると言う思いも同時にあった。
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