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情報を得ることが出来なかった。それは事態が何も変わらないと言うことであった。
次に何をすべきか迷った。そして行く場所は一つであった。
「ごめん、今回これ以上協力出来んわ」
参道求は自宅のリビングに座る岡田俊行に対してこう言い放った。
「確かに分かるけど……」
「塾長が殺された事よりあんな人間だった事の方がショックなんだよ」
3年間とは言え世話になった塾長が児童買春を行っており、それも相手は男児。そんな事実を知ればショックも大きいだろう。
「僕ねぇミステリーも書くんだけど、時々探偵側の方に苦情来るんだよ? どうしてか分かる?」
「すまん、分からない」
「被害者は死んで当然のゲスの場合にすると当然犯人には殺しても仕方ないなって感じの復讐鬼にするんだよ、そうすると犯人の方に同情の声が出てきてね…… 今回の事件なんかモロにこれなんだよ」
「……」
岡田俊行は何も言えなかった。
「もう今回は塾長に恨みがあると思われる過去の塾生全員洗って終わり! 時間かかると思うけど頑張って!」
「そんな投げやりな事言うなよ」
「それに今回は僕忙しいのよ」
参道求はリビングのテーブルの上にずらりと並べられた資料を叩きつけながら言った。
「今回は映画化前提だからね…… 下手なもの書けないのよ…… こんな時に頭がモヤモヤするもの持ってきて……」
「すまないとは思う」
「すまないと思うならもう帰ってくれないか」
岡田俊行がスッと立ち上がった瞬間に先程貰った八田大輔の名刺が落ちた。ポケットに浅く入れていたせいであった。
「あれ? その名刺」
「もう関係ないんだろ?」
「八田の名刺じゃないか?」
「八田を知ってるのか?」
「この辺のヤーサンのトップだろ? 小中と一緒だった。で、割と仲良かった」
「割と仲良かったってヤクザの息子だろ? それで仲良かったってどんな関係なんだ?」
「親がヤクザだろうと子供同士にとっては関係ないもんだからね、で、どうしてそんな名刺持ってるの?」
岡田俊行は写真の事を簡単に説明した。
「ふーん、この写真見せてもらえる?」
岡田俊行は稲葉白兎が写真帳の中から取った「比較的健全な写真」を参道求に見せた。
「小濱くんじゃないか、国語が得意だった」
「知ってるのか?」
正直またかよと言う思いがあったが今はどうでも良かった。
「小6の時から塾で一緒だった。彼には国語の授業の作者の気持ちの解き方を良く教えて貰ったよ。作者の気持ちが理解出来なくてそれでバツ貰ってたからね」
作者の気持ちが出来ない小学生だったのに今その作者の立場になっているのは皮肉だろうか。
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