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「そこのゴミ箱、予備のビニール袋がありませんね。どこ行ったんでしょうね?」
参道求は部屋の隅にあったゴミ箱をひっくり返した。出てきたのは紙ゴミだけだった。そしてゴミ箱に固定されたビニール袋一枚だけであった。
「ここ、そうそう使う部屋じゃないから一枚で十分なんですよ」
「あれ? 事務員の娘さんに聞いたらどこのゴミ箱も固定されたビニール袋の下に予備として2枚予備として入れてるそうですよ。僕もさっきここの全部のゴミ箱確認してきました。ただ自習室だけは自動販売機があるせいか多めに入れてありましたけどね」
「このビニール袋がどうしたって言うのよ」
「75リッターの割と大きなもの使ってますよね。それにナイフを刺して、そのまま人を刺したら返り血に対するガードとしては十分に使えます」
「ビニール袋にナイフを刺してそのまま主人をめった刺しにした? こんな間抜けな事が行われたって言うの?」
「はい」
「それが行われた証拠を出しなさいよ!」
「証拠もなにも見れば分かるじゃないですか。床見れば一目瞭然です」
「何よ、単なる血溜まりじゃない」
「血溜まりが出来た事がこの証拠です。返り血がビニールにあたり、そのまま床に垂れた。そうでもなきゃこんな一点に溜まった血溜まり出来ませんよ。普通にめった刺しにしてたらもっと部屋全体に飛び散ってるはずです! あそこにあった机と椅子! 死体の真横の壁! 下手したらホワイトボードにも! ところがそれが無いのは警察の捜査で判明してる! そうだよな? 岡田くん」
「ああ、それは間違いない。お前、あのプリンターのインク漏れからここまで考えたのか」
「やっぱり面白いわねぇ、あなた」
「じゃあ、お認めになるのですか?」岡田俊行がゆっくりと言った。だが、すぐに飛んできたのは意外な言葉であった。
「確かにこれで返り血は塞げるわね、じゃあそのビニール袋はどこに行ったのかしら? この塾内からは見つかってないんでしょ? この数日間ずっと刑事さん達がこの近辺探してるけど凶器どころか今言った血まみれのビニールすら見つかってないじゃない。こんなかさばるビニール袋を持ち歩いているって言うの? 馬鹿馬鹿しい」
「簡単な答えです、窓から捨てたんですよ」
「これこそ馬鹿馬鹿しいわ、この真下は駐車場。駐車場は刑事さん達も調査してるじゃない、何も無かった事はそこの刑事さんがよく知ってるはず!」
「確かにそうだ、この可能性も考えて駐車場の辺りも調べた。血液反応はどこにも無かった」
「まさかその並びの窓にある自習室や教室の窓に入れたって言うの? 仮に奇跡的な確率で窓に入ったとでも言うの? それこそ馬鹿馬鹿しいわ」
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