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近所の聞き込みに駆り出されていた稲葉白兎は渋々とルーフキャリアの上を見た。そこには酸化して黒くなった血にまみれたナイフとそれに付随して黒く染まったビニールがあった。
「ありました! ナイフとビニール!」
部屋全体に聞こえるような声で稲葉白兎は電話越しに叫んだ。岡田俊行は耳がツーンとしたがそこは気にしない。
「しかし、よく気がついたな」
「正直黒く染まってるから黒いルーフキャリアの上に落とすと保護色になって見にくかったけどね、気をつけて注視しないと分からないのよ」
「随分と用意周到な犯人さんね?」
東野尚子は余裕の表情を見せていた。殺しの手段は全部これで暴かれただろう。これでも観念する様子は一切無かった。
「いくら主人に少年愛の趣味があったからといってこれに腹を立ててここまでするかしら、戦国時代なら少年愛は稚児愛と言って普通だったから主人のこの趣味を認めていました」
「そうですね、稚児を愛することで有名だった織田信長を妻の濃姫が咎める話も聞きませんし。人様から預かってる子供に手を出すのは許されませんがそれはそれです。どうしてもお認めになりませんか?」
「ええ、私に主人を殺す理由など微塵もありませんから」
「もう一度聞きます、お認めになりませんね?」
「認めません。むしろここまで暴いて主人の名誉を汚したあなたを訴えたい気分です」
「強気ですね」
「伊達に40年以上難関校の受験を担当してません!」
「にしては裏口入学ズブズブのようですが」
「何のことかしら。あなたの書いた小説の印税全部フンだくれるぐらいの名誉毀損の慰謝料請求してろうかしら」
それを聞いた瞬間に岡田俊行は参道求に耳打ちをした。東野尚子はその間も眉一つ動かさずに参道求の顔を睨みつけている。
「大丈夫かよ、かなり強気だぜ」
「問題ない、時間稼ぎには十分すぎた。もうじき全部終わる」
「何いってんだお前」と、岡田俊行が言った瞬間、ドアが開いた。入ってきたのはいつもの白衣の女性であった。
「すいません、DNA鑑定の結果が出来たんですけど届けるのここで良かったんですよね? 岡田さん」
「え? 俺頼んでないけど」
岡田俊行が否定の言葉を出すと同時に参道求を睨みつけた(またやりやがったなこいつ)と、目で訴えたが参道求はそれを見すらしなかった。了承も得ずに勝手に科捜研に俺の名前使って調査する科捜研も科捜研であったが気にしない事にした。それより気になったのが「DNA鑑定」それを聞いた瞬間にいきなり青ざめる東野尚子の顔であった。
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