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その瞬間、東野尚子は泣き崩れた。そして膝の皿が割れるかのような勢いで膝を落とした。
「あの娘を…… 水輝を守りたかったんです…… 娘が20歳の誕生日を過ぎたあたりでした夫が突然「水輝は俺に似てないな」って言い出したのです。当然私はあなたの実の娘だと誤魔化しました。その日はそれで済んでいたのですが、数日後になって突然遺伝子鑑定研究所から郵便が届いたのです」
「民間の会社ね、私もあそこに出向していたことがあるわ」
白衣の女性がこう言った。東野尚子はそれに構わずに吐露を続けた。
「いけないとは思ったのですが封を開けて中身を見てしまったのです。そこには今参道君が持っている鑑定結果と同じものがあったわ。当然、夫と娘との血縁関係は認められないと記載されていた。そこを偶然夫に見られ…… 殴られると思ったわ、しかし夫は満面の笑みで言ったの「水輝を抱いても問題無いな」って。それを聞いて母として何が出来ましょうか? 獣のような夫から守るために何が出来ましょうか! 私も獣となり娘を守るしかないじゃないですか!」
二人は「あなた自身も裏口入学と言うカードを使って親御さんから預かっていた少年に手を出してたじゃないか」と思ったがそのまま話を聞き続ける事にした。
「そしてあの日、いつものように個人指導室を使う為の準備をしていました。夫は水輝に手を出す前に全てを公表するつもりだったようです。娘は講師の他に事務員もしていたので個人指導室の掃除も前もって夫がお願いしていたようでした、その時を狙って襲うつもりだったのでしょうね」
「しかし、娘さんが来るより前にあなたが犯行を済ませていた」
「そうです、後は参道君の言った通りよ。刑事さん?」
東野尚子は岡田俊行の方を振り向いて言った。
「刑事さん、図々しいお願いとは思いますが娘にこのことは伏せていただけないでしょうか?」
このこと。と、言われて岡田俊行は一瞬困惑した。何のことだったか頭をフル回転させて考えた。
「もしかして、水輝さんの父親の件ですか?」
「はい、母親が少年を毒牙にかけて生まれたのが自分だと言う事実は辛すぎるものがあります」
それを聞いて参道求は持っていたDNA鑑定結果の紙を岡田俊行に差し出した。岡田俊行はその紙を受け取り、そのまま判別不能なぐらい細かい紙吹雪にして投げ捨てた。その瞬間、東野水輝が個人指導室に入ってきた。
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