アンチバディ

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 中京都警視庁晴日市(はれのひ)市警捜査一課の岡田俊行(おかだ としゆき)警部補は今日が初の現場であった。これまでの交番勤務から捜査一課の刑事に採用された初日から謎の中学生溺死事件を担当させられて気が滅入っていた。野次馬として集まっている中学生の人の山を切り分けながら事件現場となったプールに辿りついた。 中京都。かねてより提唱されていた首都移転計画がなされ愛知県は中京都と名を変えた。 愛知県警は警視庁となり、東京にあった霞が関の警視庁は旧・警視庁と呼ばれるようになっていた。 「お前ら、こんなところで野次馬するより勉強しろよ」 岡田俊行が中学生達にこう言った瞬間、予鈴の鐘が鳴る。それから程無くにその人の山にあった一部の教師を除いて皆校舎内に戻って行った。 「ご苦労さまです」 現場警備の巡査と思われる群青色の制服を纏った警察官が岡田俊行に敬礼を行う。 「ああ、ご苦労さん」 岡田俊行も軽く敬礼を行い、交わした。そしてプールサイドに向かった。 プールサイドには数人の刑事と鑑識だか科捜研と思われる白衣を来た女性が数人、それに教師と思われる背広の男がいた。 「ご苦労さまです、岡田くん」 恰幅のいい刑事が岡田俊行に話しかけてきた。直属の上司である渡辺警部である。 「遅れました」 岡田俊行は野次馬のかき分けで少し遅れた事を謝罪した。 「こういうのは珍しいからね、仕方ないよ」 確かに一生のうちで自分の学校で殺人事件が起こることなど普通はありえないだろう。 イベントのような感じで盛り上がるのも仕方ない。 「事故ですか?」 「それは無いだろう、ホトケ様を見ればすぐに分かる」 岡田俊行は死体を見るのは気が引けたが、今は仕事であるので見ざるを得なかった。 死体に被せてある布を捲り、手を合わせてこの少年の冥福を祈った。 「両手両足に縛られた痕がありますね」 「可哀想に」 「隣見てみろ」 死体の隣にはコンクリートブロックが4つ置いてあった。どこにでも置いてあるような建築用空洞コンクリートブロックであった。コンクリートブロックの横には細めの真緑と黄緑色の模様をしたロープが4本置かれており、その横には放射状のヒビが入ったスマートフォンが置かれていた。 「両手両足、一本ずつそれぞれが手首足首に繋がれていたんだ」 「犯人どうしてこんな凝ったことしたんですかね?」 「俺が知るか」 二人の話に白衣の女性が割り込む。 「大量に水を飲み込んでの溺死ですね」 これ以外に何があるんだよと、岡田俊行は思った。 「右後頭部に挫傷の痕がありますね」 「挫傷…… つまり殴られたって事?」 「はい、傷の深さから考えて生前ついたものと考えられます」 「えっと、殴られてから気絶してこのプールに連れて来られたって事?」 「今の所はこう考えられます」 「このスマホは?」 「画面から落ちたせいでこのような放射状のヒビになったと考えられます、落ちた高さは30センチぐらいですね」と、だけ言って白衣の女性は再び死体の見聞に戻った。
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