アマルガムの祝福

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その瞬間に岡田俊行と参道求の二人が部屋に入ってきた。 「警察は被害者がどうやって川に落ちたかすら特定出来てないんですよ、川岸で落ちて川の中央に流れたのか、橋から川の中央に落ちたのか、そのスタートラインにすら立てなかったんですよ」と、参道求が言った後に岡田俊行が続ける。 「どうして橋の上だって知ってたんですか?」 「そ、それは…… そ、それにやっぱりあれは殺人よ! ナイフが縦に刺さってたんでしょ? 自殺なら横向きに刺すじゃない」 「今、あなた何言ったかお分かりですか?」 「あの、刑事さん? 今録音継続してるんですけど証拠になりますよね?」 「ええ、十分すぎる程に」 「何なのよ一体…… ナイフが縦に刺さってるんだから自殺ってことは……」 太本ゆみは自分の発言の重大さに気がついた。 「なんでナイフが縦に刺さってた事を知ってるんですか?」 「それ、警察しか知らない事なんですよ。なぁ龍馬くん?」 「はい、保険調査員としてこの事件の情報を調べていたのですがナイフの刺さり方はこれが初耳です」 現に岡田俊行も参道求も長谷部龍馬にナイフの刺さり方の話をすることは無かった。話したのは被害者の身元の事ぐらいであった。 「しんb……」 渋い顔をしながら太本ゆみは何か言おうとしていた。新聞で見たとでも言いたいのだろう。 「新聞やウェブサイトにも載ってない情報ですよ」 参道求は太本ゆみの逃げ道を封じた。 「もう言い訳はやめてあの夜何があったか話してもらえませんか?」 参道求がこう言うと観念したかのようにソファに座り込んだ。 「始まりは3年前でした、単純に債権者の命でお金を回収しようと思ったんです」 いきなりとんでもない事を言い出したものだとこの場にいる全員が思った。 「大木香須子もそのうちの一人でした、毎月の保険料だけは払って高額の保険に加入させたのです。元保険外交員でしたので他の債権者の身分を流用することでホームレスでも高額保険に加入させることが出来ました」 その方法、後学と再発防止の為に是非聞きたいものだなと長谷部龍馬は心から思った。 「大木香須子は保険の受取人に私を据える事に難儀を示したのです」 債権者の逆ギレなのかただ単に嫌われていたのかもう分からない。 「私は偶然自分がショタビデオに出演させてきた大木香須子の息子と名前の漢字が同じことを思い出したのです」
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