アマルガムの祝福

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「姉ちゃん! 1000万円の新台資金くれや!」 これだけで今回の事件の根本に何があったかを三人は察した。 「あれ? 姉ちゃんどないしたん?」 「ごめんね、たけちゃん…… もうお姉ちゃんね、お金上げること出来ないんだ」 「そんな事言わへんでな! 新台で釣ればいくらでもペイ出来るから!」 「こんな事言って出来たためしが無いじゃない」 「大丈夫やで! 今度こそは成功するで! オタク向けの流行りの台なんだぜ!」 このどうしようもない会話に参道求は割り込んだ。 「そうだ、借金返したいので完済証明書貰えます?」 「昨日の今日借りたばっかりじゃない? 返せるの?」 「利子含めて345万円、キッチリ返しますよ」 「使ってないじゃない、だったら利子なんていらないわよ」 「今回の事件、この借用書に書いてあるあなたの名前と保険契約書に書いてある名前の比較と借用書に付いてる周りに並べられた剥製の作り物の毛が無かったら真相にたどり着いてませんでした。真相に辿りついたお礼だと思って利子は受け取って下さい」 「?」 太本ゆみは理解してないようだったが、一緒に捜査していた岡田俊行には理解できていた。これらが無ければ「一度持ち出されていた借用書」と言う発想が出てこずにこのまま1億円が支払われて事件が幕引きされていた可能性があったのだ。 もう一つ言うなら「太本悠三」という本名が書かれたものを手に入れることでここまでの推理を組み立てる事が出来た事に対する感謝だろうか。
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