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岡田俊行は謹慎が解除されて警視庁晴日市警察署に戻ってきた。捜査一課に戻り直属の上司である渡辺警部に挨拶をしていた。
「岡田俊行警部補、本日より謹慎解除の為、勤務に戻ります!」
「おう、ようきたな。今度はもうあんなことするなよ」
「はい! 前回の件を反省しこれより粉骨砕身で勤める所存であります」
こんな事は言っているが岡田俊行は前回の件を反省していなかった。前回は警察官と言うより、自分の信念があったからこそショタDVDを全てシュレッダーに捨てたのだ。被写体となった少年の悲惨さを知ったから怒りでやったとも言えるし、何より人としてあんな物を存在させてはいけないと言う使命感が心の中にあったのだった。たとえこれが警察の証拠品保存の原則に反するとしても彼にとっては関係の無い事であった。
「あれあれ~ 先輩仕事復帰おめでとうございます」
煽るような口調で話しかけて来たのは稲葉白兎であった。
「先輩が処分したのなんてごくごく一部ですよ、それこそまだインターネットで取引きしてるところもありますし、アングラ系の動画サイトに行けば平然と流れてますよ、正直あんまり意味無かったと思いますよ~」
「それでも出来ることをやるだけだ」
「カッコイイですね? さすが警察官の鑑! 僕全部映像見てるんですけど、あの金融屋が作ったもの以外にも結構混じってましたよ、海外産とかもあったんですけどね、もう余計にひどくて見てられ無かったんですよ」
「黙っててくれないか?」
ドスの聞いたような口調だった。それを聞いて流石の稲葉白兎も黙ってしまった。
「おーこわ。あ、そうだ先輩」
「何だよ……」
「先輩の謹慎中にとんでもない事件が起こりましてね、復帰早々ではありますが即その捜査に加わっていただきたいと思いまして」
とんでもない事件。とは言うが捜査一課で起こる事は全て殺人を扱っている以上とんでもない事しかないのである。
「完全密室殺人、初動捜査の刑事もさじを投げるレベルです」
匙を投げるのは医者だぞ。と、言おうとしたが刑事が投げるものが分からなかったので言うのをやめた。さじを投げると言う単語一つで「諦める」と言う意味にもなるので間違ってはいなかったが先程までのこともあり何か言い返してやりたがったがその言葉が見つからなかった。
「僕も現場見に行きましたけどありゃあ酷いですよ、全身めった刺し! 床には血溜まり! 血の池地獄が本当にあるならきっとあんな感じでしょうね」
「それは分かったから捜査資料を貰えないか?」
稲葉白兎の報告は聞いてて何かイライラする。だから紙面で確認した方が良いと岡田俊行は判断した。
「捜査資料なら先輩の机に纏めてファイルしてありますよ、分からない事があったら科捜研に聞いてくださいよ」
そう言って稲葉白兎は捜査一課を後にした。
一週間ぶりの自分のデスクに座り岡田俊行は捜査資料を読んでいた。被害者は東野正明、62歳、精鋭塾塾長。岡田俊行は精鋭塾と言う名前に聞き覚えがあった。が、とりあえず気にせずに捜査資料を読み進めた。
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