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「辞めた。もしくは辞めされせられた生徒さんは?」
「数えきれないぐらいいるとは思いますが…… 印象ある子は覚えているんですが…… さすがに全員は…… 名簿も辞めた子のは逐一消去してますし……」
「分かりました」
こう言って岡田俊行は色々書き込んでいた手帳のページを捲った。そして次の話題に移った。
「生徒さんの件は分かりました、次は同じ講師などに恨まれていたとかそういった事は?」
「それはありません。毎月給料の方もキチンとした額を払っております。アルバイトの大学生講師に関してもそれは同じです」
「お金の件は分かりました。個人的なトラブルなどは?」
「特に無かったと思います、指導方針も逐一チェックしておりますが違える事もありませんし」
「そうですか、ではあなた方とも特にトラブル等は無かったと」
それを言った瞬間に東野尚子の顔が一瞬動揺を見せた。
「そりゃあ夫婦ですから喧嘩の一つや二つ……」
「失礼しました、次にあの部屋なんですけど……」
「個人指導室のことですね?」
「一体どういった部屋なのでしょうか?」
「読んで字の通りの個人的な指導をするための部屋です。当塾は伸びる生徒を伸ばすと言う方針を取っておりまして。特別に出来る生徒だけを個人指導で伸ばすと言った感じです」
出来ない生徒はどうなるのだろうかと気になったがきっと「見捨てる」のだろうなと思い岡田俊行は黙っておいた。
「個人指導中は誰も部屋に入れません。邪魔されないように鍵は内側にしかありません」
「外側に鍵は?」
「ありません、トイレやお風呂の簡易的な鍵ってありますでしょ? あれの外側から開けることが出来ないものをイメージしてもらえれば」
その時、東野水輝が受付からこちらに向かって走ってきた。手には多少厚めの香典袋を持っている。
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