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「この部屋の鍵って今壊れてるんだよな?」
「ああ、塾の男性講師が蹴り破ったらしい」
「なるほど、だからラッチボルトに擦れた痕が付いてるのか」
「ラッチボルト?」
「知らないのか…… まぁドアの構造の各部位の名称なんて知ってる方が少数派だからな、ドアノブひねると出たり入ったりする爪みたいなやつだよ」
「ああ…… 言われて分かった」
「で、この鍵はラッチボルトを固定して錠をかける形式なんだ。デットボルト式じゃないんだよ」
「デットボルト式って?」
「分かりやすく言うなら閂、ラッチボルトの上にある四角いやつ、普通の鍵はこの四角いやつを扉が閉まった時に固定して錠をかけるんだ」
「勉強になるわ」
「この辺りは警視庁のピッキング対策本部に聞いた方がいいぞ、むしろ僕が聞きたいぐらいだよ」
ピッキング対策本部に何が聞きたいのだろうか…… 鍵師を主人公にした小説でも書きたいのだろうか。と、考えている間も参道求は説明を続けた。
「ところがこの扉、デットボルトが存在しない本当に簡易的な鍵なんだ」
確かに東野尚子も「トイレやお風呂などの簡易的な鍵」と言っていた。その説明に間違いは無いようだ。
「それにだ」
参道求は未だに血の跡が残る東野正明の白線を指さした。
「あれだけめった刺しにしたんだ、犯人の方も血まみれだろ? 仮にドアから出られたとしても血まみれのまま塾内を歩く羽目になるぞ」
「確かに」
「そう言えば凶器は? どんな業物のナイフを使ったか興味があるんだが」
「未だに未発見。だから塾内全体を調べてるところだがどこ調べてもルミノール反応すら見つからない」
岡田俊行はこう言った後に窓際の方に歩いていった。
「この窓から捨てたと思ったんだけどこの下からもルミノール反応は出なかったんだ」
「この窓、ドレーキップ窓だったな…… 換気用の」
「ん? ど、どれーきっ?」
「ああ、ドレーキップ窓。換気の為に少ししか開かない窓」
「始めはこの窓から屋上に逃げたと思ったんだけどそのドレーなんちゃら窓のせいで無理だと思ったんだよ、そう言えば俺まだこの窓が少ししか開かないって説明してなかったよな? どうして知ってるんだ?」
「ああ、僕も昔ここで個人指導受けたことあるからね」
「ああ、あの先生からも期待されているようだったな」
「塾長夫人の英語しか受けたこと無いんだけどね、数学が苦手だったから塾長の数学の個人指導を受けたかったんだけど結局一回も受けることは無かったな」
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