アンチバディ

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数カ月後、中京地方裁判所 第四法廷。 極めて残酷な手段で殺された中学生二人の殺人事件。その審理が行われると言うことで多くの傍聴人で普段は閑散としている中京地方裁判所は人の山でごった返していた。傍聴席の抽選の為であった。その抽選を勝ち抜いた席の中に数席だけ特別な席が混じっていた。被害者席である。その被害者席には進薫と武井美穂が座っていた。二人の目線の先には被告人席に座る竹内大吉がいた。 「これより開廷します」 開廷後、検察官が罪状を読み上げる。ジワジワと溺死させると言う残忍極まりない説明を聞かされて傍聴席からはすすり泣く声が聞こえていた。 「では、被告人、前へ」 竹内大吉は被告人席から証言台に向かってスタスタと歩いた。 「智子を返せ! この悪魔! 死ね!」 「雄二が何したって言うのよ! 地獄に落ちろ!」 進薫と武井美穂が声の限りを尽くして竹内大吉を罵倒する。 「静粛に!」 裁判官が静かにすることを呼びかけるが全く効果は無い。 「静粛に! これ以上騒がしくするなら退廷を命じますよ!」 この一言でいきなり静かになった。いつの間にか証言台に立っていた竹内大吉はそこから首だけを傍聴席に向けてじっと見つめていた。そして、一言いった。 「お前ら、子供を殺された親の気持ちがわかったか?」
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