アマルガムの祝福
全2/3エピソード・完結
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アマルガムの祝福

「フザけんなよ!」 吉岡健一(よしおか けんいち)はパチンコで大負けした後に友人の犬飼遙(いぬかい はるか)に当たり散らしながら帰宅の途に付いていた。 「なんであそこで連チャン来ねぇんだよ!」 「あそこで引かないお前が悪い」 「俺は朝から並んで当たる台取ったのにどうしてボロ負けなんだ!」 「テメーの打ち方が悪いだけだろ、普通新台なら当たるぞ」 「絶対あの店裏で確率捜査してんだろ!」 「典型的な負ける奴の言い訳だなぁ」 「オラァ! もうひと勝負やるぞ! 金かせや!」 「もう店空いてねぇねぇよ! 朝から晩まで打ちやがって! お前先月もそんな事言って1万借りて1時間でオケラにしたじゃねぇか、あの金さっさと返せよ!」 「はぁ?」 犬飼遙は諦めの境地に入っていた。普通なら友達付き合いそのものをやめるぐらいの関係ではあるが幼い頃からの腐れ縁故に友達関係を続けていた。 「お前、嫁さん大丈夫かよ、もうじき出産だろ?」 「はぁ?」 吉岡健一の耳はパチンコが終わった後の耳鳴りでボワーンとしていた。パチンコが終わればいつもそんな感じなので大きな声で話す事を心がけているがそれでも駄目な時は駄目だった。 「全く…… よ! め! さ! ん! は! い! い! の! か!」 耳元で大きな声で怒鳴ってやっと吉岡健一は犬飼遙の声を聞くことが出来た。 「ああ、いーのいーの! どうせ嫁はん出産で病院だし」 「全く、お前ホント駄目人間だな…… こんな時ぐらいパチンコやめて嫁さんのそばにいてやったらどうだ?」 「子供の為にミルク代も稼がないかんしなぁ」 「駄目だこりゃ」 二人は歩いている内に駅前の橋の上にいた。吉岡健一はまだイライラが収まらないのか橋の隅の方に落ちていた石ころを川に投げ捨てた。 「バカヤロー!」 「おい、もうやめろよ」 犬飼遙は吉岡健一を取り押さえた。 「うるせぇ! 止めるんじゃねぇよバカ!」と、吉岡健一が叫んだその時だった。川に浮かぶ何かを見つけたのは。 「おい、あれなんだ?」 「気でも狂ったか? 何にも……」 犬飼遙の目線の先にも「あれ」は見えた。川にどんぶらこどんぶらこと流れる桃のような穏やかなものでは無く、人であった。 「おい、ヌートリアかなにかか?」 「馬鹿野郎! ありゃ人だよ!」 「通報! はよしろよ!」 こうしたやり取りをしている間も死体はゆっくりとゆっくりと流れて行くのだった……。
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