アマルガムの祝福

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 前代未聞の保険金詐欺未遂事件は連日ワイドショーを賑わせていた。今回亡くなった大木香須子本人よりも太本ゆみがこれまで犯してきた犯罪の発覚の方が盛り上がっていた。金を貸してホームレスにまで追い込んでさらにそのホームレスを使うゲスな錬金術はこれまで色々な事件に無責任なコメントを出してきたコメンテーター達すらも沈黙させる程であった。 「で、あれから太本ゆみはどうしてるんだ?」 参道求がテレビの前に座っている岡田俊行に尋ねる。岡田俊行は何故にこんな昼間から参道求の家にいるのだろうか。 「ああ、全部素直に話してるよ。謹慎中でも部下の稲葉が連絡はしてくれてる」 「いい部下を持ったもんだな」 「かなり口が悪いけどな」 「しかし、ショタDVD全部破壊するなんて思わなかったよ。あいつの分だけは破壊して欲しいとは言ったけどまさか全部破壊するとはな」 「あんなもの…… あっちゃいけないんだ」 「別事件の証拠品でもあったんだろ? それを破壊するなんて」 「結局、別の個人撮影のエロDVDに写っていたんだよ」 「じゃあ、ショタDVDみてた意味は」 「全くなし、だから個人的な感情で破壊した」 「始末書で済まなかったから、毎日うち来て書生みたいな事してるのか」 岡田俊行は今回の事件に関わったショタDVDを全てシュレッダーにかけて粉々に粉砕した。何の感情も無くうつろな目でDVDをシュレッダーに入れる姿は怖いものがあったと稲葉白兎は後に語っていた。 「証拠品に何してくれてるんだ!」 昔ながらの堅物刑事である渡辺警部は怒りに怒った。今回エロDVDを見ているだけの楽なお仕事をしているだけであっただけに怒られる筋合いは無いと思ったが細かく考えたら負けだと思い気にしない事にした。 「とりあえずお前は謹慎だ! 家でゆっくりしてろ!」 こう言われたが家にいるはずは無く参道求の家で小説を書く手伝いをする流れとなった。手伝いと言っても彼の雑談に乗るだけだったのだが。 「あれー おかだのおじちゃんきょうもきてるんだー」 参道求の娘、笑乃が屈託のない笑顔をしながら言う。 「お兄ちゃんな、お仕事でヘマしちゃったんだ」 「どじー」 笑乃はこうだけ言ってリビングの隣の和室に走っていった。 「ほんと、ドジだよな……」 「警察官としてはまずかったかもしれない。けど、人間としては正解だと思うぞ」 目の前のノートパソコンに文章を打ち込みながら参道求は言った。その一言だけでも岡田俊行は何故か嬉しかった。
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