澄子の答え

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澄子の答え

我ながら、どうしていいか、わからずにいると、 ニッコリと、目の前の澄子が笑った。 「…アナタ…本当に、好子に似ているわ…」 澄子の第一声だった… 私は、 「…」 と、無言。 「…正造がどんな目的で、アナタを連れて来たのか、知らないけど、好子に良く似た、アナタなら、たしかに、父に気に入られるわ…」 「…」 「…でも、でもね…」 「…でも、なんですか?…」 「…高見さん…アナタは、好子とうまくいかないわ…」 「…どうして、ですか?…」 「…アナタ…好子に似すぎているのよ…」 「…」 「…身長も、ルックスも、似ている…同じように、小柄で、同じようなタイプの美人…これでは、まるで、どっちを選べと周囲に言っているようなものよ…」 「…」 「…ねっ? …そうでしょ?…」 「…だったら、好子さんの勝ちです…」 「…どうして、勝ちなの?…」 「…だって、好子さんの方が、私よりも、若いですから…」 「…高見さんより、若いから?…」 「…だって、世間では、女の価値は、年齢ですから…」 私は答える。 「…年齢?…」 そう言ったきり、澄子は黙った。 そして、一瞬後に、爆笑した。 「…高見さん…アナタは、正造が選ぶだけはあるわ…自分よりも、好子が勝る部分を上げる…でも、肝心のルックスは、どっちが上か言わない…頭の回転のいいひとね…」 「…」 「…ルックスは好みの問題も大きい…アナタと好子は似ている…小柄で、美しい…ちょうど、女優の常盤貴子を小柄にした感じ…でも、似ているのは、全体的なイメージ…顔を見れば、やっぱり違う…だから、どっちを選べと言われれば、個人の好みの問題になる…」 澄子は解説する。 私は、どう言うべきか、悩んだ。 が、結局、 「…」 と、答えなかった。 「…高見さん…」 「…ハイ…」 「…楽しくやりましょう…」 「…楽しく…ですか?…」 「…そう…楽しく…人生は楽しまなくちゃ…」 そう言うと、澄子もまた、踵を返して、私と直一の前から、去った。 まるで、嵐がやって来て、すぐに去ったような感じだった… 私は呆気に取られた。 直一が、 「…澄子は相変わらず、自分の言いたいことだけを言って、帰る…自己チューなところがある…」 と、言った。 「…初めて会った高見さんは、戸惑うかもしれないけど、澄子はいつもああなんだ…」 直一が説明する。 私は、黙って、首を縦に振って、頷いた。 頷きながら、内心、当惑した。 そして、この日を境に、この高見ちづるの運命が大きく変わることになる… そんな予感がした。                <続く>
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