化け物ども

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化け物ども

林泉寺の僧は…苦渋の選択を迫られていた。騒ぎが漏れれば、東叡山が、事態の収集に乗り出す筈だった。 「本学院!相手はそう言ったのだな!何か余計な事は?調べるような事は…いや、隠してももう手遅れよ!東叡山処か封所の化け物が乗り出すと約束したのだから…。」 封所から…化け物が這い出ようとして?体が重い、鏡を通って逃げて来た筈だったのに…何かを載せて居るような感じだ。 コワイハナシナンカシナイデ! 「があ、ゴフッ!ああああ〰️う。うごあああ〰️。」 口から剣を吐き出して、僧は絶命していた。 デモコレデハナイナア…持っていた鏡の中から呟く声を、目の前の異常事態に…林泉寺の僧は聞き逃している。吐き出した筈の剣が消え。血の海に僧が沈んでいた。 「化け物の方が先であったか…しかしこれでは…。」 意味不明なまま死者が増え続け兼ねない…寺の対応が後手後手に回っている意味が…混沌として理解出来ないのである。 「本学院坊より林泉寺殿へ、気立ての優しい鬼の家です。どうか気軽に寄って下さいお茶もお菓子も沢山あります。どうか…仲良くなれますように。」 慎重に箸で僧の口から手紙を取り出していた。恐怖の底で一つの魂が喰われている。そう勘違いされても仕方ない事態だった。手紙を読んだ住職は厳重に回りの口を封じ、手紙を口の中に戻した何を視たかは一切話さなかったが…暫く魘されたのは言うまでもない。 東叡山から、絶対にその少年に手を出さないようにと忠告されたのは後の祭りであった。 「本学院の準備が整い次第、寛永寺に少年を迎えるつもりでございます。それまで辛抱なさいませと最上上人宛の手紙が文殊堂に…まあ化け物は、時と所が何とも…そのような話ですから、辛抱なさいませとしか言う言葉がございません。」 上杉の菩提寺と偉そうな寺が…困り果てて居る。菊が事実上の使者として亀岡文殊堂に…随行を頼んだのは、封所の使者が僧とは限らないからだった。
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