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おっかな橋
橋の真ん中に左門は立っているらしい?らしいのは…見えないからだった。
「ちょっと!遠慮する必要ないからはっきり見せてあげなさいよ。まあ、どちらでも同じだけど?真っ暗じゃおかしいでしょう?」
石?作りだろうか?だが詳しくはないが、およそ左門が知っているどの石とも違うような気がする。菊を守る為に来たと思う。
「キクキリ、あまり騒ぐな…歓迎はされているらしいぞ?」
回りの気配が見えないのは…相手が用意を整えているつもりなのでは?
コワガラナイデ コワガラナイデ
キダテノヤサシイオニノウチデス なのにみんな恐がるんだ…。
子ども!その少年は同じ事を繰り返す。
「君は誰だね?」
誰かが少年に聞いている。
アナタハダレ?橋の端で菊と左門がそれを見ている。ただ左門はいくらか違和感を感じている様子ではある。
「キクキリ、菊!さっきから俺の帯を引っ張る奴が居るんだが招待状の主はこれなんだろうか?」
菊の応えは待たず何物か?少年から目線を外さないまま帯を探る小さな赤ちゃんらしい手が帯から生えていた。菊は、ずっと少年の注意を惹き付けている。何か別の…情報を掴んではいるらしいが…。
「おっかな橋…おっかな橋に居るの。」
少年の気配が消え、菊があわてて橋を…左門が後ろから羽交い締めにしていた。
「私だった…私の姿で…どういう意味?ねぇあの子助からないの?そんなのいや!助けてあげて!助けて!お願いだから…。」
菊が嗚咽している。その後ろにそっと寄り添う若い尼僧に、生きている感覚があった。
橋の袂におっかな橋とその由来が書かれていた。
「キクキリ…もう終わった事なんだ…。お前が無事ならそれでいいじゃ無いか?」
何故か優しい左門がいる。
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