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存在の不確かな意味
林泉寺に書状を送るのは…どのタイミングが良いのか?考えている。小十郎は大阪には参戦しなかった。家督を息子に譲って白石城で病気の療養中ではある。ただもう一つの戦に片倉小十郎景綱は息子共々参戦するつもりである。
「もう嗅ぎ付けておいでか?」
小十郎のまわりを何かが取り囲んでいる気配、覚悟はずっと前からしていた。
「いい加減見張りも疲れるでしょう?どうです、月見酒と洒落ませんか?」
ザワッ
ザワザワザワザワ ざわざわざわざわ がさがさ ギシギシ ぎしぎし
白い行者の姿がうっすら浮かんで来て…小十郎にかわらけ(盃)をつきだす。
「何時だ…」
盃に何かを注いでいるが、どれだけ注いでも小十郎は上げない。
変化
「私はまだ小十郎であって、コジュウロウではありません。」
やっと杯をあげて、全てを飲み干そうと始める。その間、どれくらいの時間が経過するのか?表の景色が目まぐるしい変化を横に見せても…二人は動かない。
「全ては…あの男の死から動き始めると思ったら宜しいのでは?」
行者の顔、輪郭がはっきりしだした。
「我を足止めしたつもりかえ?コジュウロウ」
轟音で消されては居るが女の意思が宿っている。
コジュウロウは、ニイーと歓喜の笑いを浮かべると…バキバキバキバキ
人間の口が此処まで開くかと思う位口を開けて行者を丸のみした。
「情報を得るには、食らうのが、最適なんです。あなたも秀頼様を御守りするにはこうすれば宜しい。上杉を呪っている暇があればね…。」
ザアザアと何かが引き上げて行く中に、腰を抜かした法師の顔があった。コジュウロウは法師の背中に、林泉寺への言伝てを…貼り付けて見た。
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