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「…。」
グリモア女子寮、105号室──僕の部屋。
…僕は、紙袋に入れた絵本をただ抱き締めていた。
…白百合家の僕の部屋は全てステラにプレゼントした。
──聞いた話に依ると、ステラはあの一件以来元々の自分の部屋には寄り付かずに僕の部屋で生活しているらしい。
そうして…星となった僕が何時か空から零れ落ちて、帰って来るのを待っているらしい。
──舞さんならきっと、僕は死んだのだと優しく伝えてくれるだろう。
…医者の診断では学校に行くのも難しい程に知能が成長していないそうだが。
──あの人は、この白百合 王子を育てた母親だ。きっとステラは母親似の良い女性になるだろう…☆
「…。」
ステラから奪ってしまった絵本達を強く抱き締める。
──舞さんはきっと、ステラの為にも絵本を描くだろう。…それはちょっと嫌だ。
『ねぇ、まいさんはどうしていつも目を閉じてるの?』
「…。」
ベッドで目を閉じ、過去を回想する。
『申し訳ございません。…私はあまり上手く笑うことが出来ないのです。
半端なものを見せるくらいなら、一層閉じてしまった方が良いかと思い、こうしております。』
…ふっと笑い、枕元の鏡を見る。
…思えば、僕とあの人は似ていたのかも知れない。 …いや、僕があの人に似たのか。
──まぁ、親子なんだからそれは似るだろう。
…あの人はそう言いながら、鏡を見れば何時も笑顔の練習をしていた。…その隣には僕もいて。
…あの人はこれからも鏡の前であれを続けるのだろうか。…僕にはもう、分からないことだ。
…一層、あの人がこの鏡の中にでも住んでくれればね♪
或いは、深夜0時ジャストに鏡を覗くと舞さんが映るとか。…止めとこう。
──何にせよ、ただ人と会うと言うことがこれ程難しいものとはね…。
「…。」
鏡に映る僕の顔を、この頭は操 舞であると認識する。
…それを殺すように。僕はランプを消す。
「…おやすみ、舞さん。」
──嘘を吐いた唇が、悲しく震えていた。──
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