春休み(後)

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白百合邸…馬小屋。 「…よしよし。我らのご主人は多忙であらせられるな。」 ブラシでリリィ殿の毛を梳いて行く。…白く、実に美しい毛並みだ。 「〇、××」 「ん?」 一度頷き、ブンブンと首を振られるリリィ殿。 「…それだけでは無い、と言うことか?」 「~♪」 某がそう尋ねると、嬉しそうに鳴き声を上げるリリィ殿。…やはり、人語を理解しておられるようだ。 「~…♪」 リリィ殿は空を見上げておられる。 「…ふむ。」 …思えば、何を思うことも無く…こうしてただ空を見上げると言うのは初めてのことだ。 …これも、中々悪くない…。 「…なあリリィ殿。 某は…どうすれば良かったのだろう?」 今は主である白百合 皇と姉上に従ってはいるが…某に取っては、竜胆の里の人々も家族であり、絶対に背いてはならない主だった。 「~?」 首を傾げるように、真逆の方向を向くリリィ殿。…某にはそれが、『馬に聞くな』と言っているように見えた。 「フフ…♪…然り、だな…。」 そも、人に聞くようなことですら無かっただろう。 …もしかすれば、誰に聞いたところで「解らない」と言ったような回答しか得られないような…そんな問いだ。 …それでも、あの2人であれば。 某が思うようにすれば良い、とでも言うのだろう。 「…。」 …今度、2人を誘って里帰りでもするとしようか?(と言っても、今あの場所に残っているのは『危険区域』とやらだけらしいが。) 「…。」 …否。この考えこそ、某が出した答えなのだろう。 …つまり、許して欲しいと思っているのだ。 家族の怨念を、無念を…。背負うのを止めようと…。 「…。」 …それは、正しいことなのか…?
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