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ケンはいつものように、目尻を下げて笑った。親しみやすいその笑顔で、ひょいと壁を乗り越えて、誰とでも友達になってしまう。新太はあまり愛想がいいほうではないけれど、ケンの傍にいると、いつの間にか友達が増えているような状態になっていた。
「どんなコ? さっきの授業なら一年?」
「いや、四年」
「四年?! マジで? なんか相変わらず予想の斜めうえからくるよな、新太は。お前が年上好きなんて知らなかったよ」
ケンは本当にビックリしたように目をまんまるにする。その顔は小学一年で出会ったその時から変わらなすぎて、つい笑ってしまう。
「別に年上が好きなワケじゃないから。さくらさんがたまたま年上ってだけで」
「ほお。さくらさん、ね」
ケンがさくらの名前を口にしただけで新太は嫌な気分になる。
「さくらさんに声かけんなよ。お前、馴れ馴れしいから」
「いくら俺が見境ないからって、お前が人生で初めて惚れたひとをクドくほど、見境無くはないから。まあ俺、年上全然オッケーだけどな。上は十コ上まで付き合ったことあるし」
「そうだったっけ?」
「ほら、高二の時につきあってた二十七歳の……えっと名前なんだっけ」
そこまで言われ、新太は苦笑しながら頷いた。
「思い出した。会社員のまどかちゃん、じゃね?」
「そうそう! まどかちゃんだ。大学生って嘘いってつきあっていたけど、歳バレて別れたやつ。私を犯罪者にする気? ってガチギレされてさ」
「あー、そうだった。お前ホント、懲りないよな」
女の子が大好きなケンと違って、新太は異性とつきあうということに興味がなかった。興味がない、というより、女の子に割ける心の余裕も時間がなかった、といったほうが正しいかもしれない。
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