第十二章 可愛いひと

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 興奮している弟の様子をみていたさくらが、口を開いた。 「もしかして、哲ちゃんがいつもやってるゲームって格闘ゲームだったの?」  その言葉に哲人は呆れたように瞳を見開いた。 「他のもやるけど、メインは格ゲー。ねえちゃんさ、彼氏が格ゲーの有名ゲーマーなのに俺がやってるゲームがわかんないって、やばくね?」  新太は思わず吹き出してしまう。 「う、うるさいなあ。仕方ないでしょ。ゲーム、やったことないんだから。でも哲ちゃんまで新太くんのことを知ってたなんてびっくり」 「格ゲー、やりこんでいる奴なら、みんな知ってるよ」 「新太くん、ヤッパリ有名なんだね」  さくらが感心したように新太をみてくるから、照れてしまう。 「ゲーマーにちょっと知られているくらいだよ」  その言葉に、哲人ばぶんぶんと首を横に振った。 「ちょっと、どこじゃないですよ。超有名ですよ。だけどリアルで会うとARATAさんってイメージ違いますね。ゲームをしているときはめっちゃクールなのに、こうして実際あうと優しいお兄さんって感じ」  哲人がワクワクした感じでそういう。 「俺、プレイしてるとき、そんなに怖い顔をしているのかなあ。さくらさんにも言われたけど」  自分では実感がない新太は頭を掻いた。 「怖いっていうより、すごく集中している感じが、クールにみえるんだとおもう」  さくらが真面目にそういうと、哲人が頷いた。 「ねえちゃん、ゲームのことは知らなくても、ARATAさんのことはよくわかってるなあ。しかもすごく楽しそうだし。今までの彼氏といる時と、表情が全然違う」  何気ない哲人の言葉がその場の空気を変える。 「えっ!」  新太とさくらが、同時に叫ぶ。
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