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「えーと、ゼミの?」
勢いに押されていき、なぜか疑問形で答えてしまう。
「ゼミ……あの三井って人もくるんですよね」
新太の表情がどんよりと曇ってきたから、慌てて言葉をつなぐ。
「三井くんもゼミ生だから来るよ。でもそんな顔しないで。三井くんはただ一緒に勉強しているだけで、本当に何でもないから」
「……」
新太の顔を覗きこむ。嫉妬してくれている年下の彼はご機嫌ななめだけれど、なんだか微笑ましくて口元が緩んでしまう。
前髪をあげている新太はいつもよりおとなっぽい。不機嫌なその表情にも色気を感じてしまうくらい。新太は大きく息を吐いてから、自嘲するよう笑った。
「ごめんなさい。さくらさんを信用していない訳じゃないし、ずっと側に居られないのは俺の都合だし。拗ねたって仕方ないってわかってはいるんだけど」
目を伏せた新太の手を、さくらは思わずそっと掴んでいた。
「毎日、メッセージ送るから。一日の出来事とか。海外でも見れるよね?」
眩しいものをみるように目を細めてさくらをみつめ、照れたように手を握り返してくる。
「見れますよ。俺も送ります」
ちょうどその時だった。すぐ背後に誰かが立つ気配がして、二人で後ろを振り返る。新太よりもかなり年上の、スーツ姿の男性がコーヒーをもって立っていた。彼は新太をみて微笑んだ。
「新太じゃん。お前もここにいたの?」
「大介さん? びっくりした。お疲れさまです」
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