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新太もペコリと頭をさげる。大介と呼ばれた男は、目尻をちょっとさげるような親しみやすい笑みを浮かべて頷いた。
「新太もミーティングだよな?」
彼の親指がスポンサー会社のビルがある方向を差す。
「あ、はい。一時からですよね」
「広報の高柳さん、時間にうるさいだろ。早く来てここでコーヒー飲んで時間調整してたんだ。なに、新太はもしかしてデート?」
そういってさくらを見つめる。目があった瞬間、柔和に見えた男の瞳がどこか鋭くて、思わずどきりとする。
「あ、そうなんです」
新太が照れたようにそういうと、男が笑った。
「へー。お前、彼女が出来たの初めてじゃない?」
「大介さん、でかい声でそういうこと、言わないでくださいよ」
新太が顔をしかめると、男は楽しげに笑った。
「しかも美人さんだし。はじめまして。俺、神谷大介っていいます。新太とは同業です」
そう言って微笑んだ神谷には、先程感じた鋭さはなかった。さくらは少しホッとする。同業といえば彼もゲーマーだ。
新太よりかなり年上だろう。ナチュラルに伸ばした黒い髪、切れ長の目。雰囲気は落ち着いているけれど、彼もまた組織に属している感じがしなかった。
時折みせる鋭い眼差しは一匹狼、という方が合っている。神谷大介という名前にも聞き覚えがあった。以前、司が話していたことを思い出す。
『絶対的チャンプの神谷大介』
(この人が、その神谷さん!)
さくらは慌ててたちあがった。
「川島さくらです。どうぞ宜しくお願いします」
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