第十三章 予感

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「俺はめっちゃ悔しかったですよ。大抵相手は年上だったけど余裕で勝てたのに、大介さんだけにはいくら全力でやっても滅多に勝てない。大介さんと対戦してから、本気で格ゲーやり込みましたよ。ていうか今でもなかなか勝てないけど」  そういいながら笑いあう二人には確かに共有した時間と絆があって、さくらは立ち入れない空気があった。 「格ゲーをやる奴って、年齢層が高いんですよ。俺くらいの年の奴が多いかな。今の子たちってスマホもあるし、俺らの時代よりもゲームの選択肢、たくさんあるから。だから新太みたいな若い格ゲーマーは貴重なんだよね」  神谷は目を細めて新太を見た。その視線はライバル、というより弟を見つめる兄のような温かさがあった。 「そういえば、大介さんって今いくつなんですか?」  新太があっけらかんと尋ねると、神谷がお前ざっくり聞いてくるな、と苦笑した。 「三十三だよ」 「三十三?! そんなにいってましたっけ?」 「ふざけんな。新太もすぐに年とるぞ。覚えとけ」 「なんですか、その感じ悪い言い方。折角若くてカッコイイって言おうと思ったのに」 「嘘つけ」  神谷は口ではそういいながらも楽しそうに笑う。 「大介さん、モテるし。彼女が途切れたことないって聞きましたよ」  新太が真面目な顔をしてそういうと、神谷は、あー、といってちょっと目を泳がせた。それから、新太にぴたりと視線を合わせて言った。 「彼女ができても続かねえわ。会う時間がないからすぐフラレる。それってモテてないのと一緒だろ?」  新太は一瞬息を飲むようにして黙った。神谷はさらに言葉を重ねる。
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