第十三章 予感

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「プロゲーマーをやってて、結婚する奴もいるけど俺はムリだ。彼女より、格ゲーを優先するからな。そうしないと俺は勝てないし、そうすべきだと思うから。だからゲーマーを引退しないかぎり、ずっと独りだな」  さばさばとそういう神谷に、さくらは思わず息を呑む。黙って話を聞いていた新太が不意に口をはさんだ。 「俺はどっちも取りますよ」  ぼそりとそう呟いた新太の横顔は、怖いくらい真剣だった。強い眼差しで神谷を見つめると、彼はふうん、といって口元を緩めた。 「勝てればいいんじゃねえの。プロは結果がすべてだからな」  そのまま数秒黙ったあと、神谷も真面目な表情になった。 「ただ……お前は俺と似たところがある。中途半端はできない」  神谷の言葉が意味するもの。最初に会った時の鋭い眼差し。神谷が新太だけじゃなく、さくらにもこのことを伝えるために同席したのではないか。さくらははっと胸が突かれたような気がした。  場の空気が固まった瞬間、それを和らげるように神谷がごくさりげないタイミングで、口元に笑みを浮かべた。 「さてと。俺は先にいってるわ。邪魔して悪かったな」 「大介さん!」  立ち上がった神谷を、新太が強い調子で引き留めた。   「俺、中途半端にはしません。絶対に」  神谷は新太をじっと見つめた後、瞳を緩め、目尻に小さな皺を浮かべて頷くと、手を軽くあげていってしまった。 「新太くん」  しん、とした空間。さくらが小さな声で呼びかけると、去っていく神谷の後ろ姿をみつめていた新太の厳しい表情が、穏やかなものにゆっくり戻っていく。 「さくらさん、ごめん。急に大介さん来ちゃって」  さくらはふるふると首を振って、なんとか笑顔で新太に応える。
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