第十三章 予感

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「神谷さんて、格闘ゲームのトッププレイヤーなんだよね?」 「大介さんのこと、知ってたんだ」  瞳を見開いた新太にそっと頷く。神谷が去っていった方向をみつめながら、新太が口を開いた。 「プロゲーマーのパイオニア的存在で、チャンプとかレジェンドっていわれてる凄い人なんだけどすごく気さくで。俺が中学のときから、よく声をかけてくれて色々教えてくれたんだ」  新太は大きく息をついた。 「うん。なんだか本当のお兄さんみたいだなって思った」 「そう。ずっと憧れのお兄さんだった。でも今は大介さんに勝たなきゃ上にいけない。大きな壁でライバル。国内だけじゃなく、海外の大会でも必ずあたるから」  遠くを見つめるような眼差しをしている新太に、さくらは一瞬躊躇ったあと、思いきっていう。 「神谷さんも言っていたけど、私の存在が新太くんのゲーマーとしてのキャリアを邪魔しちゃうことがあるとしたら……」  そう言いかけたとたん、新太はさくらの口を人差し指でそっと押さえた。 「邪魔なんてことがあるわけない。俺、さくらさんを知らなかった頃の自分なんかもう、思い出せないよ」  切なげに目を細めてそう言われ、胸が疼くように軋んだ。新太はそのまま手をさくらの首の後ろに当てて引き寄せ、白い額に唇を押し当てた。 「もう行かなきゃ」  ゆっくりと唇を離した新太は名残惜しそうに微笑み立ち上がった。さくらは引きとめるように無意識に新太の手を握りしめてしまう。 「そっか。うん……」  もっと一緒にいたい。でも引き留めることなんてできない。さくらは、その葛藤を抑え込むように、なんとかそれだけ呟いて微笑むと、新太は頷きさくらの手を握り返した。
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