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「俺、あいつに聞いたんだ。ゲーマーなんてみんな、鬼のようにトレーニングしてる。一日十時間とかね。ましてや学生であまり時間がとれないのに、その上さくらとつきあって、ずっとトップに君臨してる神谷に勝てるのかって」
さくらの唇がぴくりと震え、不安げな表情に変わったのを見逃さず、司はさらに畳み掛ける。
「あいつは言い切った。トップもさくらも取るって、ね」
さくらははっとしたように手のひらを口にあてた後、ぽつりと呟いた。
「こないだ神谷さんに会ったの」
不安そうなその瞳に司は黙って頷く。
「はっきりは言わなかったけど、神谷さんはゲーマーとしての新太くんに、私は邪魔だと思っているみたいだった」
「……ARATAはなんて?」
「神谷さんに勝つからって」
控えめな声でそういったさくらを見つめた。新太を好きだからこそ、不安と切なさがいりまじった横顔。胸が軋むように痛む。
それでも話の流れは望む方向にきている。一気に加速させなくてはいけない。司はジーンズのポケットからスマホを取り出した。
「日本の格ゲーマーはライバル同士という以上に仲間意識が強いんだよ。日本では特にゲーマーに対して風当たりが強いからね。神谷はもう三十代だし、自分の後継としてARATAに目をかけているんだろうな」
そういいながら、『Match Result』と書かれているホームページを表示させる。
「今ARATAってアジアの大会回ってるんだろ?」
「よく知ってるね。夏休みに入る前くらいから韓国にいって、そのあと香港。今はシンガポールだって」
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