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不安そうに司を見つめるさくらの前に、そのスマホ画面をかざして見せた。
「その大会、ARATAは去年もでてたんだよな。で、去年の結果がこれ」
英語表示のホームページ画面を指差す。
「去年は韓国も香港もセミファイナルまでいってる。シンガポールは優勝。だけど今年は……」
画面を素早くタップして今年のページをさくらにみせる。
「今年は、韓国、香港ともセミファイナルどころかベスト8にも入ってない。こんな状況だとシンガポールの大会も厳しいだろうね」
さくらが大きく息を呑む様子を、司は冷静に見つめた。
「ちなみに神谷は韓国で優勝、香港ではファイナルまでいってる」
神谷が優勝を決め、ガッツポーズをしている画像がアップされているサイトをみせると、さくらの瞳が揺れ、悲しげに潤む。そんなさくらの表情は司の嫉妬をさらに煽る。
「でも、これからも大会はあるし、もしかしたらたまたま、調子が悪かっただけかもしれないよな」
さくらの気持ちに寄り添うような緩衝材としての言葉を挟む。実際、その可能性もある。ただ去年のARATAの快進撃を考えると、今回の出来の悪さは際立って酷い。
さくらとの交際が原因というより、複合的な要因によるスランプなのかもしれない。けれどそのことはあえて司は口にしない。
「私、どうしてあげればいいんだろうね」
泣き笑いのような表情で司をみつめるさくら。それは司に尋ねるというより、自問自答しているようにもみえた。
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