第十四章 棘

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 目の前のさくらをみつめる。さくらも司の言葉を待っている。 「そっか。わかった。でも、もし……」  さくらを安心させるように、くだけた笑みを浮べて言葉をつなぐ。 「俺が何か役にたてることがあったら遠慮なくいって。力になるから。さくらより格ゲー、詳しいしさ」  司の笑顔をみてほっとしたように、さくらが頷いた。 「ありがとう。私、本当に何も知らないから三井くんに教えてもらわないと」  穏やかに微笑んださくらに、司も笑みを返して頷く。不自然にならないように、そっと視線を外した。それから。胸の奥で疼く痛みを押し流すように、司はコップに入っていた生ぬるいビールを一気に煽った。
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