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空港から重たい体を引きずるようにして部屋にたどり着き、ベッドに転がりこんだとたん、意識が途切れてそのまま寝てしまった。新太は自分の想像以上に疲れていた。
それでも神経はどこか尖っているから、新太を安眠させてはくれない。何か得体のしれないものに追いかけられた夢をみて、はっと目覚めたら朝の四時だった。それからしばらく目を開けたままぼおっとしていた。
アジア遠征は最悪の出来だった。韓国、香港では二回戦敗退、敗者復活戦後も歯が立たなかった。シンガポールでも負けてしまったものの、なんとか食い下がって敗者復活で勝ち上がり、ぎりぎりベストエイトに入った。
それでも去年の結果に比べたら雲泥の差。自分でもここまで調子が落ちているなんて、想像もできなかった。頭をグシャグシャとかきあげ起き上がり、大きなため息をついた。
「さくらさんに、連絡しなきゃ」
ここ二日、さくらになんのメッセージも送っていなかった。帰国の日にちは、知らせたから、きっと心配している。床に脱ぎ捨てていたジーンズを拾い上げ、ポケットからスマホをとりだす。メッセージアプリを開くと、予想どおり、さくらからメッセージが届いていた。
『新太くん、おはよう。東京はとても暑いよ。そちらはどう? 体には気をつけてね』
『新太くん、寝れていますか? 寝れるときにゆっくり休んでね。おやすみなさい』
『新太くん、もうすぐ帰国だね。あえるのを楽しみにしてるね』
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