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ソファの前にあるローテーブルに、さくらは買ってきた何種類ものパン、グレープフルーツ、コーヒーを並べる。
パンは以前バケットを買ってきたお店のもの。そのときも新太はバケットをおいしいと食べていたから、口にあうはず。コーヒーは空ききったお腹には刺激が強いかもしれないと、牛乳をあたためて、新太のカップに注いでスプーンでかきまぜる。
「さ、食べてみて」
テーブルの横で立ち尽くしていた新太の腕をひいてソファに座らせ、さくらも横に座る。
新太は目の前に並んだパンをじっと眺めていたけれど、ゆっくりとサンドイッチに手を伸ばして一口かじった。その様子をさくらも一心にみつめる。新太が顔をあげた。
「どう?」
「あ……うまい」
ようやく、新太らしい笑顔をみせてくれて、さくらも自然と笑みがこぼれた。
「よかった。遠慮しないでどんどん食べて」
次第に食べる速度が早くなっていく新太の様子を、さくらはただただニコニコしながらみつめていた。
すこしずつ生気を帯びていく横顔をみているだけで胸がいっぱいになる。半分以上パンを食べたところで、新太がカフェオレを飲んではあ、と大きく息をついた。
「うまい。久しぶりにちゃんと食べた。……でも俺ばっかりで、さくらさん、あんまり食べてない」
「食べてるよ?」
「いや、食べてない。さくらさんもちゃんと食べて?」
さくらは首をふる。
「大丈夫。適当に食べているから。新太くんが食べてくれるのが嬉しいから」
新太はさくらをじっと見つめたあと、ちょっと目を伏せて呟いた。
「さくらさんは優しい、ね」
その言葉と裏腹に、表情は冴えない。さくらは、胸の奥がきしむような息苦しさを覚える。
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