第三章 彼の個人的活動

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「……あるにはありましたけど、女の子と付き合う、とかちょっと考えられない状況だったから。あ、今もそうなんですけど」 「そうなの? 運動部にでも入ってるの?」  新太は首を軽く傾げて考えるような素振りを見せたあと、呟いた。 「うーん、個人的な活動、ですかね」 「個人的な活動……。どんな?」 「今日はやたらにツッコミをいれてきますね、さくらさん」  新太は苦笑するけれど、さくらの追求は止まらない。  小さい頃から人見知りなさくらは、人に根掘り葉掘り質問したりすることはほとんどなかった。  成長するにつれて、コミュニケーションスキルを磨き、人あたりはよくなったけれど、あっさりしていて執着しないスタイルは昔から変わらない。  それは彼氏に対しても同様で、告白されてとりあえずつきあってみたものの、とにかく受け身。  そのうち相手との温度差から、距離ができて別れてしまう。そんなパターンが何度か続き、告白されてつきあう、という事はやめてしまった。  そんなさくらが、新太に関しては受け身でどころか、かなり積極的に関わろうとしているから、さくら自身も不思議だとは感じていた。  ただし好き、とか付き合いたいということではなく、とにかく気になる。そんな表現のほうが、ぴったりとくる。  最初は家の飼い犬、しーちゃんに似たカワイイ男の子、という印象だった。けれど新太は今まで他の男の子には感じたことのなかった、興味を抱かせるを持っていた。  シャイなのに、若い男の子特有のヘンな力みがなくて自然体。それでいて強い信念やブレのない意志を持っていることが話していると、伝わってくる。
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