第十六章 交錯する心

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 なにかあったのは間違いない。けれどその事を尋ねても何も言わないだろう。新太と揉めたのか。いや、揉めたというより、彼女自身の問題なのかもしれない。  合宿の打ち上げで、さくらに向かって放った棘。あれがとうとう刺さったのだとしたら。  さくらは今、ゲーマーとしての新太を守るために、彼から身を引こうとしている。けれどまだ迷っている。そう考えれば説明がつく。    彼女が苦しむことはわかっていた。深く新太を想っていることは一目瞭然なのだから。ただその姿を目の当たりにしてしまうと、司の胸も苦しくなる。自分が思うような流れになっているとしても、嬉しさよりも痛みのほうが強い。  けれどそうまでしてもさくらをあの男から引き離したかった。初めてさくらが本気で好きになったあの男を。司はしばらく逡巡したあと、思いきって口を開く。 「見たほうがいいんじゃないの?」 「え?」  びっくりしたように、さくらが司を凝視した。その提案は計算でも打算でもなかった。それが良いのか悪いのか司にもわからない。  実際新太は勝負勘を取り戻して勝ち続けるかもしれないし、やっぱり調子が悪いままなのかもしれない。どんな結果であったとしても、それはさくらにとって必要なプロセスであるような気がした。 「あいつが本気モードでプレイしてるとこ、生で見たことないだろ? 見てみなよ。奴がやっていること。やろうとしていること」 「三井くん……」  今日はじめてさくらが司をまっすぐに見つめた。司も揺れるその瞳をしっかり捕まえるように見つめ返す。
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